お祭りの写真の肖像権
行きつけの写真館さんで仕事の打ち合わせをしていると、地元のマダムが次々に入ってきてお祭りの写真を6切サイズにプリントしてフォトコンテストの応募用紙に記入していました。お祭りの写真には違いないのですが、ほとんどの写真は「誰かが何かをやっている」写真です。ステージで出し物をしているグループを撮ったもの、炭で焼かれた秋刀魚を購入しようと並んでいる人たち…。
ふと「写っている人に許可取ってるのかな」という疑問がわいてきました。どの写真をコンテストに出すかその場で決めていたぐらいですから許可なんて取っているわけないですね。
そこで家に帰って少しネットで調べてみました。結論からすると「スナップには何のルールも無い。バシバシ撮ってもOK。しかし訴えられればほぼ負ける。」ですね。多額の賠償金を請求されるとのことです。確かにスナップは日常の瞬間を切り取ってるだけなので誰でも見れるもののはずですし、撮られる側も見られていることはわかっているはずですので、金銭的な損害や精神的な苦痛が無いと考えられます。盗撮とは違うんですね。ただ世の中には写真になる事で思わぬ被害に合ってしまうような複雑な事情のある方が意外に多いと思っていた方が良いと思います。特にそのような方々はなぜかお祭りによく出没します。男女間の倫理的にまずい方、会社の就業規則的にまずい方、職業的にまずい方、逃亡中の方…。想像すればいろいろ出てきそうです。
今回のお祭りの場合はホームページ上で「フォトコンテストを開催します」とはっきりうたっていますので、お祭りに来る方は写真に撮られることを了承した上で参加しているはずですが、「そんなの見ていない」と言われればアウトです。ちなみに募集要項にも下記のような責任回避の条項が盛り込まれています。
(5)応募作品は、いずれも被写体本人または被写体の所有者の了解を得た作品とします。
(6)応募作品に対する被写体の中の権利保有者からの苦情・異議申し立てがあった場合の責任は、全て応募者に属するものとします。
要するに「訴えられたら撮影者が負ける」ということです。
ルールが無くてもモラルを大切に
僕はカメラで仕事をしていますので、依頼が無い限りはそういう危険な場所での撮影は控えています。フォトコンテストにも参加しません。訴えられればプロもアマチュアも関係ありませんから。飲食店の賑やかな様子を撮影することはよくありますが、いつもお客さん1人1人に説明して許可を取っています。たまに「掲載されるのはまずい」と言われる方もいます。理由までは聞きませんが、そういう方が1人でもいれば撮影はNGになります。
上の写真はそのお祭りのホームページのヘッダーのスライドショーの1枚です。僕の基準では完全にアウトなのですが…。
これもスライドショーの1枚です。これも僕の基準ではアウトです。
これだけ大勢いれば何人かの人物が特定できてしまうのは避けられません。お祭りの雰囲気を伝えるためにはモザイクをかけるのも良くないですしね。上の写真の場合は特定できてしまう人物がたまたまあまり人には見られたくないであろう仕草の最中を撮ってしまっているのでアウトです。トリミングでなんとかなりそうなものですけどね。下の写真は写っている人の表情が明らかに怪訝そうな表情をカメラマンに見せてしまっています。本人に確認すれば「これがいつもの顔であって掲載してもらって何も問題ないよ」って言ってもらえるとは思いますが、念のためのアウトです。
カメラマンの仕事
では「来年のホームページのヘッダー用に写真を撮って欲しい」という依頼があった場合、カメラマンはどのように仕事をするのか。とりあえず人物がたくさん写り込む場合はたくさんシャッターを切ります。これはデジタルだからというわけではありませんよ。フィルムの時代からそのようにしています。写っている人全員の表情をチェックして「本人が見たら気分よくないだろうな」という表情の写真は削除します。出来ればお祭りを楽しんでいる表情がいっぱいあるほうが良いので、何か笑顔が生まれるきっかけをじっと待ったり、演者さんに根回しして意図的にそういう瞬間を作ってもらったりします。さらに納品の前に余計な写り込みを削る為にトリミングをしたり角度のゆがみを補正したりして納品します。
誰でも写真が撮れる時代にプロカメラマンが存在する意義はこういうところにあるのだと思います。
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