動画の仕事について。
僕はスチール撮影が本業なのですが、近頃急速に動画撮影の仕事が増えてきました。ホームページに貼付けるための動画や記録販売用の動画などがほとんどですが、業種は実に多様です。接骨院、保育園、美容室、葬儀関係、飲食店、自動車関係、エクステリア関係、イベントの記録…。
動画撮影に関しては本業ではないため積極的に営業はしていませんが、問い合わせがあった場合は内容次第でお受けしています。最近は4K、8Kなどと次世代の話も出始めましたが、現時点では1920pixのフルHDまでの納品しかありません。
動画の仕事を受けるときの悩み
「動画もお願いできる?」とクライアント様は気軽にたずねてくる訳ですが、しっかり内容を確認しないと大変なことになります。
レベル1「Facebookに載せるだけだから、写真撮影のついでにスマホかなんかで動画も撮っといて」→この場合は恐らくギャラは見込めませんのでなるべく別の方に頼んでもらうようにしています。
レベル2「ホームページのバックグラウンドにイメージとして流す動画を撮って欲しい」→この場合は音声は無視するかBGMで代用できそうですし、ループ再生ですので数十秒〜数分の短い動画です。一眼レフの被写界深度の浅い表現を利用したりレンズ交換をしながら一眼レフならではの表現力が発揮できる仕事です。動画撮影用のスライダー(レール)も使います。撮影代と編集代を提示してお受けしております。
レベル3「ホームページ内に製品の紹介動画を貼付けたい」→この場合は映像の表現力というよりは分かりやすさや伝わりやすさが重視されますので、音声と照明にこだわらないといけません。ガヤガヤした雑音の多い場所でない限り特別なマイクを用意しなくても声はキレイに入りますので音声は大丈夫だとして問題は照明です。蛍光灯ではフリッカーが心配ですし、あまりキレイには撮れません。僕は昼光色のLED電球を傘バウンスしてある程度光をコントロールできるようにしました。少しでも製品を魅力的に見せる技術は、写真撮影におけるライティングの知識がかなり役に立っています。カメラ1台でできますし、編集も簡単ですので、比較的安価に引き受けられます。
レベル4「イベントの記録動画を販売用に作って欲しい」→この場合は数時間の記録撮影ということですので、一眼レフ動画では難しいですね。僕はキャノンのxc10というビデオカメラを使っています。4Kも撮影できるカメラです。長回しもできますし、軽いのでスタビライザーを使ったなめらかな撮影にも使えます。イベント撮影で大変なのは編集作業です。撮影すること以上に時間がかかります。オーサリング(文字や画像、音声、動画などの要素を組み合わせて一つのソフトウェアやコンテンツ作品を組み立てること)までできないといけません。記録時間も長いので、レンダリング(画面の内容が記述されたデータをコンピュータ上で処理を行い、データにかかれている記述通りに実際の画面や画像のイメージを表示させること)やオーサリングにいちいち時間がかかります。このかかる時間に対して妥当な報酬がいただける場合はお受けしております。
レベル5「アーティストのPVを作って欲しい」→この辺までくると表現力が大変重視されますのでとても僕の機材レベルでは不可能です。AKB48のPVがキャノンの一眼レフで撮られていましたが、それは一眼レフのレンズの表現力を利用したものであることはその通りですが、それ以外にも音声録音もシビアでしょうし、照明も重要ですし編集も時間をかけてやっていることでしょう。何人ものクリエイターさんがチームを作って行われている仕事です。フリーのカメラマンの副業レベルの僕に頼むのは危険です。
レベル6「映画ってつくれる?」絶対無理です。
編集作業というもう1つの仕事
僕は編集作業はAdobe Premiere Pro CC2015を使っています。WindowsのムービーメーカーやMacのiMovieなどの無料ソフトも以前は使っていましたが、やはり無料なだけあってかゆいところには手が届きませんでした。Adobe Premiere Pro CC2015は本職のクリエイターさんも使っていますので、出来る機能が豊富ですし細かい作業もできます。それだけに使いこなすのは大変です。僕も作業する度に壁にぶち当たっています。その都度ネットで解決策を探したり、HowTo本のお世話になったりと悪戦苦闘の日々を送っています。
ただ以前出来なかったことが簡単に出来る様になっていたり、新しい機能を発見したりととても楽しいのです。
スチールカメラマンのギャラが低下して行く理由
写真撮影の仕事のギャラがどんどん下がっていますね。例えば婚礼スナップ(アルバム作成は別として)。フィルムの時代は6万円〜8万円ほどでした。そこからフィルム代と現像代を引いて5万円〜6万円の報酬でした。現在の婚礼スナップのギャラは2万円程度ではないでしょうか?中には1万5000円で受けているカメラマンもいると聞きます。ここ10年で半額以下まできました。
理由を考えるとデジタル一眼レフカメラの普及によりカメラが購入しやすくなったこと、カメラのオートモードが高性能になりそこそこの写真は誰でも撮れるようになったことなどが挙げられると思います。さらにスマホのカメラが高性能になったことで、プロカメラマンが汗水垂らして身に付けた技術に価値がなくなってきたことも挙げられると思います。
動画撮影はありがたいことにまだ敷居が高い
写真撮影に比べると動画撮影には勉強しなければならない部分がたくさんあります。動画機能付き一眼レフを持っていても動画はうまく撮れないというカメラマンは多いです。それもそのはず。ビデオカメラで動画を撮影するよりも一眼レフで動画を撮影する方がはるかに難しいからです。
●一眼レフカメラマン→フレームレートやハイディフィニション、インターレースやプログレッシブ、レンダリングやオーサリング…聞き慣れない用語にギブアップしやすい。
●記録ビデオカメラマン→被写界深度や絵としての構図に無頓着なため仕上がった作品のクォリティが低くなりがち。周辺機材がとても高価なため安いギャラの仕事は受けづらい。
このような現状があるような気がします。そこで僕のような副業で動画の仕事を受けているカメラマンにとっては、大きなチャンスがあるのかもしれません。確かに機材に投資すればそれだけ受けられる仕事の幅も広がるのですが、所詮1人でやれることには限界があるので、なるべく出費を控え今ある機材を最大限に活用しながら仕事をこなすことが重要です。機材はそう簡単に購入できませんが、勉強はいつでも無料で出来ます。